« 将棋:藤井七段が敗れるも魅せた名局 | メイン | 日常:西川の高反発マットレスで快眠 »

世相:参院選2019についての所感

 7月21日(日)に、第25回参院選が行われた。
 投票結果は、なかなかに興味深いものだったので所感をまとめてみた。
 報道でいろいろな評価が成されているが、有権者の意思が読み取れるのである。

 (自分は、期日前投票ではなく、選挙を実感したくて当日投票に出かけた)

◆投票率48.8%
 選挙区の投票率は48.8%で、過去最低だった1995年の44.5%に次ぐ低水準だった。 
 有権者が政治の現状に期待と関心を持てないことが原因であろう。
 過半数の有権者が棄権した選挙に、政治責任者の首相はまずは陳謝すべきと思う。
 

◆比例区の得票結果
 選挙の得票結果は、比例区にはっきりと現れる。

参院選2019~比例区党派別/議席数&得票

党派改選今回男性女性得票得票率
自民191915417,712,37235.40%
立民48627,917,72015.80%
公明77616,536,33613.10%
維新45504,907,8449.80%
共産54314,483,4119.00%
国民43213,481,0787.00%
れ新02112,280,2534.60%
社民11101,046,0112.10%
N国0110987,8852.00%
安死0000269,0520.50%
幸福0000202,2780.40%
オリ0000167,8970.30%
労働000080,0550.20%
合計4450401050,072,192100%


◆表の勝者:れ新とN国
 今回の勝者は、明らかに、れ新とN国である。
 れ新は比例区で、N国は選挙区合計で、得票率が2%を超え、政党要件を満たした。
 議席確保まで、マスメディアはこれらを「諸派」として十把一絡げで黙殺していた。

 れ新は、重度障碍者の2名を当選させた。
 これにより、国会議事堂のバリアフリー化が行われ、障碍者支援の法改正も進みそうだ。
 実績をあげ、公約で掲げた新しい経済・財政政策の実現に向かって欲しいと思う。

 N国は、「NHKにスクランブル放送を」のOne Issueで1議席を獲得した。
 Abema TVに出演した立花代表の主張は、単純・明快できわめて説得力があった。
 スクランブルどころか、NHKの基盤を揺るがし、解体・再構築までも進みかねない。

 れ新とN国は、SNS、YouTube、演説会で選挙活動を展開し、選挙資金も寄付で集めた、
 わずか2議席と1議席で、社会の岩盤の一角を、誰にも見える形で変えようとしている。
 従来はなかった新しい政党の誕生及び成果と評価できるだろう。

◆裏の勝者:さまよえる有権者
 既成政党にうんざりし、投票先のなかった有権者が動いた。
 比例区でれ新とN国に投票した約300万人の有権者は、確かな達成感を得たと思う。
 自らの投じた一票が、議席獲得に生きたことを実感したからである。

 このことに共感する有権者は、棄権者を含め、案外多いかもしれない。
 百貨店的な政策を掲げる政党よりも、専門店的な政党が支持を集めるかもしれない。
 無党派層には、体感できる政策を求めてさまよう多様な有権者が存在していたのだった。

◆表の敗者:立憲民主党
 立民は、議席数こそ伸ばしたが、存在感はうすかった。
 一人区で野党共闘を実現して、衆院選小選挙区への布石はできた。
 それにしても、比例区の得票率15%ははいかにも低く、25%は必要だろう。

 現行の比例区では、記名投票があって、その票数の多い順に当選者が決まる。
 立民の得票率が低いので、記名票の多い組合出身者が当選枠をほぼ独占したのだった。
 組合の党に見えてしまうイメージが強まり、無党派層の離反を招く恐れもある。

 非現実的と批判される経済・財政政策は、抜本的に見直す必要がある。
 このままでは、れ新のやや過激な経済・財政政策が論議の主導権を握ると思う。
 旧来型政党に戻ったような立民の正念場である。

◆裏の敗者:マスメディア
 選挙期間中に選挙報道をしないマスメディアは、ネット(特にYouTube)に完敗した。
 低投票率志向の政権・与党、それに忖度(そんたく)したマスメディア。
 48.8%の低投票率は期待以上であったろうが、中身は衝撃的だった。

 諸派として黙殺していた「れ新とN国」が、ネットを駆使して議席を獲得した。
 マスメディアに依存せずに、ネットで選挙を戦えることが証明されてしまった。
 黙殺と忖度はマスメディアの驕りであり、自己の存在否定となってしまった。

 もはや、有権者は選挙情報はネットから取得し、マスメディアは見向きしなくなる。
 そのマスメディアが、唯一ネットに勝るのが、開票速報だけ。
 しかし、やがて、電子投票の時代になれば、本来は無意味なこの中継番組も消滅する。

◆勝者を装う敗者:自由民主党
 「国民の信を得た」と首相は語ったが、これはフェイクだ。
 自民は改選で9議席も減らし、3議席増の公明を合わせてやっと改選過半数だ。
 さらに3議席増の維新を加えても、改憲発議に必要な3分の2を割り込んだ。

 与党は固定票を生かして勝つ戦略として、低い投票率を狙っていた。
 国会を軽視し、質問をはぐらかし、説明責任も全く果たさない。
 有権者は政治への期待を失い、政治への関心を薄めてきたのは、与党の思うツボだ。

 選挙結果は、公明の固定票が相対的に際立ち、皮肉にも自民への浮動票が大きく減った。
 そもそも比例区で自民の得票率は35%で、有権者総数の20%にも満たない。
 「国民の信を得た」とは、笑えないジョークだ。
 
◆転機の兆し
 「れいわ新選組」と「NHKから国民を守る党」は政治・社会に衝撃を与えた。
 強く行動して、社会の共感を呼び起こせば、固い岩盤も崩れる。
 選挙で一票を投じることで、それに参加できる。

 有権者の政治不信のマグマは根強い。
 今回の参院選をきっかけに、このマグマは動き始めるのだろうか?
 与野党、マスメディアはそれにどう対応するのだろうか?