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原発事故:孫正義さんの講演

◆孫さんが<脱原発>を熱く語った
USTREAMの中継録画で、ソフトバンク社長の孫正義さんの講演会を視た。(4/30)
今回の事故を受けて、<脱原発>と自然エネルギーへの転換を、約一時間、熱く語った。
具体的なデータをグラフで示し、きわめて説得力のある巧みな語り口であった。

 ・USTREAM 2011/04/22(USTREAMは、ソフトバンクが運営する動画サイト)
  「自由報道協会主催」東日本大震災についての講演と記者会見
  孫正義「エネルギー政策の転換に向けて」

すばらしい講演であった。
<脱原発>の理念を掲げ、その実現のために自ら行動する孫さん。
その志と情熱に心から賛同したい。

◆孫さんは変わった
孫さんは講演で語る。
福島原発事故までは、原発推進でも<脱原発>でもなく、要するに無関心だった。
事故後、一ヶ月ほど前に、<脱原発>でなければと思うようになった。

原子力発電のように危険なエネルギー源は、次世代に残すべきではない。
原子力=安全&低コスト、というプロパガンダにだまされてはならない。
安全、低コスト、自給自足の自然エネルギーは、実現可能なのだ、と。

 ◇ ◇ ◇

孫さんが変わるきっかけは、おそらく、後藤正志さんとの対談だ。
この対談も、一ヶ月ほど前に、USTREAMで中継された。(これもすばらしい内容)
お二人は初対面ということだが、すっかり意気投合した様子であった。

後藤さん(元東芝の原子炉設計技師)は、原発の危険性を一貫して訴え続けてきた。
マスメディア(マスコミ)に登場することはない。異端児扱いだ。
しかし、原発事故は現実に起き、後藤さんの危惧したように展開している。

原発の危険性を、設計理念から、切々と語る後藤さんに、孫さんは共鳴したのであろう。
この対談で、「原発は止めねばならない」と総括しておられた。
多くの人が、後藤さんの警鐘に耳を傾けるようになってきたと思う。筆者もそうである。

◆孫さんの行動
まずは、ベースとしての財団を創る。
ご自身が10億円を拠出し、賛同者(個人、企業など)を募る。
財団では、<脱原発>の情報を収集し、公開し、社会に真実を伝える。

「誰かがやらねば」と、孫さんは語る。
「誰もやらないから」と、孫さんは立ち上がった。
「成功するかどうかは分らない」とも。

たぶん、政・官・産・学・マスメディアの原発推進複合体の妨害工作は激しくなる。
誹謗・中傷・個人攻撃は、執拗に繰り拡げられるに違いない。
すでに、手を替え品を替え、それは始っているようだ。

そうした懸念を問われて、孫さんはきっぱりと言い切った。
「国民の力で推進せねば」
「私には、覚悟がある」!!!

◆政策実現のスローガン
孫さんは、政策を実現するためのスローガンを示された。
太陽光発電を急速に普及させたドイツの例に倣うものだ。
簡潔に、わずか一行:

 ・自然エネルギーを『1KW時40円で、20年間買い取る』

このスローガンの下、国、地域、企業、個人が自然エネルギーに邁進する。
技術を開発し、電力網のスマートグリッドを構築する。
現在の九電力による独占体制も改革が必要であろう。

(蛇足ながら)
◆フリーランスの記者も<低>脳度な質問
講演後、記者会見が行われた。
「自由報道協会」の主催であり、閉鎖的記者クラブの場合とは異なる期待を持っていた。
しかし、ほとんどの質問はお粗末な<低>脳度ぶりを露呈した。

記者クラブの記者の質問は、慣れ合いと怠惰と惰性の重箱の隅つつき。
一方、「自由報道協会」のフリーランス記者の質問は、自己PRと観念的内容の空回り。
日本のジャーナリズムの実態が顕れているようで、お寒い限りだ。

日本では意見を述べるとき、会社名などを名乗るのが普通だ。
氏素性の分らない者は、意見を述べる機会すらない。
意見の内容よりも、それを述べる立場が重視されるのだ。

大きな組織、有名企業に所属する者は、所属先を示せば済む。(個人名はどうでもよい)
フリーランスはそうはいかない。組織名や会社名は知られていないからだ。
そこで、質問に際して、まずは自己紹介(PR色が強い)をすることになる。

何人もが、司会者から「質問をお願いします」と促される始末だ。
質問は、自分の信条や経験に基づく観念的なものが多く、孫さんの具体性と対照的だ。
また、孫さんの志と行動に前向きにに賛同する意見や質問は少なかったように思う。

記者クラブに虐げられているフリーランスの方々の悲哀も感じられる。
今後は、個人名だけを名乗り、質問の内容で勝負する気概を示して欲しいものだ。
それこそが、「自由報道協会」とダメ記者クラブを差別化するキーであると思われる。