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2010年02月10日

『土偶展』~東京国立博物館

◆土偶展
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10日午前、上野の東京国立博物館へ。
『土偶展』は、昨年、大英博物館で開催されたものの帰国展。
「縄文のビーナス」など国宝3点を含む土偶が一堂に会した。

21日までの開催なので、今のうちにと出かけた次第。
10:45-12:00 の間、ほどほどの混み具合で、ゆっくり鑑賞できた。
土偶は、どれも小型であり、展示場は小広間といったスペースであった。

入館したとき、地下1Fのコーナーで、土偶の紹介ビデオを流していた。
それを見てから、売店でカタログを買い、展示場へ。
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いよいよ土偶とワクワクの初対面である。

◆土偶たち
国宝・重文級は、独立のガラスケースに収められていて、四方から鑑賞できる。
「縄文のビーナス」(H:27cm)は、やはり魅力的で、デッカイお尻の艶やかな妊婦像だ。
彼女は、縄文中期(4~5千年前)の作で、長野県茅野市で出土した。

同じく国宝の「合掌する土偶」、「中空土偶」(写真)は、精巧な作りが印象的だ。
ともに、縄文後期(3~4千年前)の作。
数ある土偶のうちで、国宝に指定されているのは、3点おみという。

もっとも感銘したのは、重文「立像土偶」(H:45cm)で、たおやかな女性ガンダム風。
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横からの姿も魅力的、すらりとしていながら力強く、ふと法隆寺・百済観音を想った。
目、口、鼻などは省略されている。縄文中期(4~5千年前)の作、山形県で出土。

意外だったのは、有名土偶よりも、無名(?)土偶が人を惹きつけていたこと。
特に、ハート型土偶などがまとめてある展示ケースの前に人だかり。
その場で見入ってしまう人が相次いで、なかなか近付けない。

これらのあまりに時代を超越した奇抜な造形のゆえか。
有名土偶への既視感と異なる、未知との新鮮な遭遇感がそうさせるのか。
作られたのは、縄文後期(3~4千年前)である。

実は、土偶は全て女性であり、ほとんどが妊婦であるという。
これは初めて知った!
また、出土するのも東日本・北海道だけで、とりわけ関東と岩手・青森が中心だ。

◆縄文への想い
土偶から見れば、縄文文明はその中期から後期の約2千年間が中心だ。
出土した土偶達だけでも、悠然とした2千年の縄文の時の流れを語ってくれる。
東日本に散らばる各地で、時とともに類似の様式の土偶が作られてきた。

その連携はどうやって維持されたのであろうか。
土偶職人が渡り歩いて、デザインや製作技術などを伝えたのかもしれない。
縄文時代は、自立した各集落が互いに連携し、自由で平和な社会を作っていたのかも。

土偶を介して伝わる縄文人の造形力と生命力、それを脈々と継続した文明力。
神を敬い、自然を敬い、祖先を敬い、生命の誕生を願う。
数千年の時を越えてほとばしる土偶のエネルギーに大きな感動を覚えた1日であった。

◆(追記)
当展のカタログはすばらしい出来映えである。
個々の土偶の解説が、特徴などを含めて、とても分かりやすくかつ詳細だ。
土偶の図解や年表・地図も工夫されていて、「土偶入門書」に値するほどだ。